佐々木信綱歌碑

防人ら 名をなつかしみ 船ゆ見けむ
遠つ家島は 夏霞せり

信綱は、歌人弘綱の長男として、三重県に生まれる。東京大学を卒業し同校にて万葉集及び歌学史等研究、その研究は著名である。

父の跡を継いで、歌誌「心の花」を発刊した。その歌風は温雅清新である。この歌は、昭和十二年前島を「船にてめぐって」の序文である。古代より、防人は、関東より来て難波を出ると小舟に分乗して瀬戸内の島伝いに九州方面に下ったのであろう。家島群島を通過する時は、なつかしい故郷の家や家族を思い出したことであろう。はるかに霞む島を望みながら防人の悲哀、哀愁、不遇などを詠んだ歌である。